クライアントから素材を受け取る進め方|画像・文章が揃わないときの対処法


はじめに

前回の記事ではクライアントにサーバーとドメインを選んでもらうときの提案の仕方を解説しました。今回はWeb制作の現場でよく起こる「素材がなかなか揃わない問題」を取り上げます。「テキストを送ってください」とお願いしたまま何週間も経ってしまう・画像がなくて制作が止まってしまうという状況は、フリーランス初心者が必ず経験する悩みです。素材の受け取り方・依頼の仕方・揃わないときの対処法を実践的に解説します。


1. 素材が揃わない問題はなぜ起きるか

1.1 よくある原因

素材が揃わない原因TOP5:

① クライアントが「何を用意すればいいか」
  わかっていない
  → 「テキストと画像をお願いします」だけでは
    具体的に何が必要かイメージできない

② クライアントが本業で忙しい
  → Web制作はクライアントにとって
    最優先事項ではない
  → 「後で送ります」が何週間も続く

③ 用意の難易度を低く見積もっていた
  → 「写真くらいすぐ撮れる」と思っていたが
    実際に動き出すと時間がかかる
  → 自己紹介文を書くのが思ったより難しい

④ 素材の形式・品質の基準がわからない
  → 「どんな写真を撮ればいいか」がわからない
  → 「何文字くらい書けばいいか」の目安がない

⑤ 制作者からの依頼方法が曖昧
  → 「素材をください」だけでは動きにくい
  → いつまでに・何を・どの形式でが明確でないと
    後回しになりやすい

💡 素材が揃わないのはクライアントのせいだけではありません: 制作者側の依頼の仕方を変えることで、スムーズに揃うようになるケースがほとんどです。


2. 契約前・ヒアリング時に確認しておくこと

2.1 素材の有無を最初に確認する

ヒアリング時に確認すべきこと:

写真・画像について:
□ プロのカメラマンに撮影を依頼する予定はあるか
□ スマートフォンで撮影した写真でも使えるか
□ 過去に撮影した写真素材はあるか
□ フリー素材を使うことに抵抗はないか

テキストについて:
□ 会社案内・パンフレットなど
  既存の文章素材はあるか
□ テキストの執筆はクライアント自身が行うか
□ ライターへの依頼は予算に含まれているか
□ 競合他社のサイトなど「こんな感じで書きたい」
  という参考はあるか

ロゴ・ブランドについて:
□ ロゴデータはあるか(形式はAIかSVGか)
□ ブランドカラー・フォントは決まっているか
□ 会社のガイドラインはあるか

2.2 素材提供期限を契約に盛り込む

契約書・確認書に記載しておく内容:

「素材のご提供について」の項目を設ける:

・テキスト素材のご提供期限:〇月〇日
・画像素材のご提供期限:〇月〇日
・素材のご提供が遅れた場合、
  納期が同期間延長となる場合があります
・ご提供から〇日以内に制作を開始いたします

→ 期限を「契約書に書いてあること」にしておくと
  後で催促しやすくなる
→ 「契約書にある通り」と言えるので
  人間関係を傷つけずに催促できる

3. 素材依頼書(素材シート)を作る

3.1 素材依頼書とは

**素材依頼書(素材シート)**は「何をいつまでにどんな形式で提供してほしいか」をまとめた一覧表です。一度作れば使い回せて、クライアントの負担も大きく減ります。

素材依頼書に含める内容:

┌────────────────────────────────────────┐
│ 【素材ご提供のお願い】              │
│ 〇〇様  制作担当:〇〇             │
│ 提供期限:〇月〇日                 │
├────────────────────────────────────────┤
│ ■ テキスト素材                     │
│ □ キャッチコピー(20〜30文字程度)  │
│ □ 会社紹介文(200〜300文字)        │
│ □ サービス紹介①(タイトル+100文字)│
│ □ スタッフ紹介(名前・役職・一言)  │
│ □ よくある質問(Q&A 5〜10問)       │
│ □ 会社概要(名称・住所・電話番号)  │
│                                    │
│ ■ 画像素材                         │
│ □ メイン写真(横長・縦横比16:9)   │
│ □ 会社・店舗の外観写真(3〜5枚)    │
│ □ スタッフ写真(全員・個人)       │
│ □ 商品・サービスの写真(各5〜10枚)│
│ □ ロゴデータ(AI・SVG・PNG)       │
│                                    │
│ ■ その他                           │
│ □ 営業時間・定休日                 │
│ □ アクセス・地図情報               │
│ □ SNSアカウントURL                 │
└────────────────────────────────────────┘

3.2 Google スプレッドシートで共有する

スプレッドシートで素材管理するメリット:

① クライアントと制作者がリアルタイムで確認できる

② 進捗状況が一目でわかる
   → 「済」「対応中」「未着手」のステータスを
     色で管理する

③ コメント機能でやり取りができる
   → 「この写真は横長のものをお願いします」など
     具体的なフィードバックをセルにコメントで残す

④ Googleドライブと連携して素材を直接アップロードしてもらえる
   → 「このフォルダに写真を入れてください」と
     リンクを共有するだけ

スプレッドシートの列構成の例:
| 素材の種類 | 内容・要件 | 担当 | 期限 | ステータス | 備考 |

4. テキスト素材の受け取り方

4.1 テキストを書いてもらうのが難しいクライアントへの対応

多くのクライアントにとって文章を書くことは得意ではありません。

テキスト収集の3つのアプローチ:

① 質問に答えてもらって制作者がまとめる
   → 「以下の質問に答えてください」と
     5〜10問のアンケートを送る
   → 回答をもとに制作者がWebサイト用の文章に整える
   → クライアントが確認・修正する流れにする

   質問例:
   「お店を始めたきっかけを教えてください」
   「お店の一番の強みは何ですか?」
   「どんなお客様に来てほしいですか?」
   「よく聞かれる質問はありますか?」

② 電話・オンラインインタビューで聞き取る
   → 「15分ほどお時間をいただけますか?」と
     インタビューを行う
   → 会話を録音(許可を取ってから)して
     内容をテキスト化する
   → AIツールで文字起こし→整文化すると効率的

③ 既存素材から抜粋・再利用する
   → 名刺・パンフレット・過去のサイト
     SNSのプロフィールなどから転用する
   → そのままでなくリライト(書き直し)して使う

4.2 テキストの品質基準を伝える

クライアントに伝えるテキストの書き方ガイド:

文字数の目安:
→ 見出し(h2):15〜30文字
→ 本文:1段落100〜200文字が読みやすい
→ ヒーローの大見出し:10〜20文字
   できるだけ短く・インパクトある言葉

写真の場合と同様に:
→ 「競合のこういう感じで書いてほしい」という
   参考サイトを見せてもらう
→ 「こんな文章はNG」「こんな文章がOK」を
   具体例で示す

---
NG例(制作者がよく見るケース):
「当社は創業〇年の老舗として、
 地域の皆様に愛されてまいりました。
 今後ともよろしくお願い申し上げます。」
→ どこの会社でも言えそうな言葉・特徴がない

OK例:
「〇〇を使った手作りの△△で、
 地元のお客様が笑顔になれる
 〇〇屋さんを目指しています。」
→ 具体的・その店ならではの言葉

5. 画像素材の受け取り方

5.1 写真の要件を具体的に伝える

クライアントへの写真の撮り方ガイド:

サイズ・解像度:
→ スマートフォンで撮影したものでOK
→ 最近のスマートフォンは画質が十分
→ ただし「LINEで圧縮送信」は画質が落ちる
   → Googleドライブ・Dropboxで共有してもらう

横長か縦長か:
→ Webサイトのメイン画像は横長(16:9)が基本
→ スタッフ写真は縦長(1:1またはポートレート)
→ 「どちらも」撮ってもらっておくと安全

明るさ・背景:
→ できるだけ明るい場所で撮影する
→ 背景がごちゃごちゃしていない場所を選ぶ
→ 自然光(窓際)が最も綺麗に撮れる

よくある失敗例と伝え方:
→ ブレている写真 → 「手ブレに注意して
  壁などに手を当てて撮ってください」
→ 暗すぎる写真 → 「昼間に自然光のある
  場所で撮影してください」
→ 解像度が低い → 「LINEでなく
  GoogleドライブやAirDropで送ってください」

5.2 フリー素材の活用と提案

写真が用意できないクライアントへの対応:

① フリー素材サイトを活用する
   おすすめのフリー素材サイト:
   
   ・Unsplash(unsplash.com)
     → 高品質な写真・商用利用可能
     → 英語サイトだが日本語で検索できる
   
   ・Pexels(pexels.com)
     → Unsplashと同様・日本語対応
   
   ・ぱくたそ(pakutaso.com)
     → 日本人モデル・日本の風景が多い
     → 商用利用可能
   
   ・PIXTA(pixta.jp)
     → 有料だが日本の素材が豊富
     → 単品購入550円〜

② AI画像生成を活用する
   → Midjourney・DALL-E・Adobe Firefly など
   → 「存在しない商品写真」や「概念的なイメージ」
     に向いている
   → 実在の人物・店舗の写真には使えない

③ フリー素材を使う場合の提案文:
   「写真素材が難しい場合は、
    クオリティの高いフリー素材を
    使うことができます。
    ただし、将来的にオリジナル写真に
    差し替えることをおすすめしています。
    フリー素材では"その会社・お店ならでは"の
    雰囲気が伝わりにくいためです。」

5.3 素材の受け渡し方法

ファイルの受け取り方:

おすすめ(データが劣化しない):
✅ Googleドライブで共有フォルダを作る
   → 「このフォルダに写真を入れてください」
   → クライアント側の操作が最小限
   → 制作者がいつでもアクセスできる

✅ Dropboxで共有する
   → Googleドライブと同様

✅ ギガファイル便・wetransfer
   → 大容量ファイルを一時的に送れる
   → Googleアカウントがない場合に便利

❌ 避けたほうがいい方法:
→ LINEで送る(画質が落ちる)
→ メールに添付(容量制限がある)
→ USBで渡す(対面前提になる)

Googleドライブでの共有フォルダ設定例:
📁 〇〇様_素材フォルダ
  📁 テキスト
    ├── 会社概要.docx
    └── サービス紹介.txt
  📁 写真
    ├── 店舗外観
    ├── スタッフ
    └── 商品・サービス
  📁 ロゴ・ブランド
    └── logo.ai

6. 素材が揃わないときの対処法

6.1 催促のコツ

催促が苦手な制作者へのアドバイス:

催促することは「失礼」ではありません:
→ 素材が揃わないと納期に影響する
→ それはクライアントにとっても困ること
→ 「お互いのため」と思って連絡する

催促のタイミング:
→ 期限の3〜5日前:リマインド
→ 期限当日:確認
→ 期限の3日後:状況確認

催促のトーン:
→ 責めるのではなく「確認」する
→ 次のアクションを明確にして終わる

6.2 催促メッセージの例

催促メッセージの例(LINEやメール):

【期限前リマインド】
「〇〇様

お世話になっております。
〇〇(制作者名)です。

素材のご提供期限が〇月〇日に
近づいてまいりましたので
ご確認のご連絡をさせていただきました。

現在のご状況はいかがでしょうか?
ご不明な点や困っている点があれば
お気軽にお知らせください。

よろしくお願いいたします。」

---

【期限が過ぎた場合】
「〇〇様

お世話になっております。
〇〇(制作者名)です。

素材のご提供期限〇月〇日を
過ぎているかと思いましたが、
ご状況はいかがでしょうか?

お忙しいかと存じますが、
当初の納期〇月〇日に向けて
制作を進めてまいりたいと思います。

もし期限の延長が必要な場合は
お気軽にご相談ください。
その場合、納期も調整させていただければと思います。

よろしくお願いいたします。」

6.3 仮素材・ダミーテキストで先に進む

素材が揃わないなかで制作を進める方法:

① ダミーテキストを使う
   → 「Lorem ipsum」(英語の仮テキスト)
   → 日本語の場合は「ああああ〜」や
     同じような文章量のサンプルを入れる
   → 「テキストが届き次第差し替えます」と伝える

② フリー素材で仮組みする
   → Unsplashなど著作権フリーの画像で
     レイアウトを確認できる状態にする
   → クライアントに見せて「こんな雰囲気になります」
     とイメージを共有する

→ 「ここまでできました」という状態を
  先に見せることで
  クライアントが素材を用意する
  モチベーションが上がることが多い

💡 「ここまでできました」を早めに見せることが素材収集を促す最強の方法です: 人は「動いているもの」を見ると完成させたくなります。デザインの雰囲気が見えると「早く完成させたい」という気持ちが湧いて、素材集めに動いてくれることが多いです。


7. 写真撮影を外注・提案する

7.1 カメラマンを紹介できると差別化になる

フリーランスとして「カメラマン紹介」ができると:

→ ワンストップでサービスを提供できる
→ クライアントの手間が減る
→ 写真の品質が上がりサイトの完成度も上がる
→ 制作費に撮影費を上乗せできる

カメラマンの探し方:
→ クラウドワークス・ミツモアで探す
→ 地域の写真家コミュニティで紹介してもらう
→ 同業のフリーランス仲間に紹介してもらう

撮影費用の相場(参考):
→ 商業撮影(半日):3〜8万円
→ スタッフ写真(数名):2〜5万円
→ 飲食店料理撮影:1〜5万円

→ 「カメラマンのご紹介も可能ですが
   いかがでしょうか?」と選択肢を出す
→ 断られても問題なし・受けてもらえたら
  ディレクション費として1〜2割上乗せできる

8. 素材管理をシステム化する

8.1 毎回使える素材チェックシートを作る

テンプレート化しておくべきもの:

① 素材依頼書(Google スプレッドシート)
   → 業種別にテンプレートを用意しておく
   → 「飲食店版」「美容院版」「士業版」など

② 写真の撮り方ガイドPDF
   → 「良い写真の例・悪い写真の例」を画像で示す
   → 提供フォルダへのリンクを記載

③ テキスト記入シート
   → 回答するだけでWebサイトのテキストが揃う
   → 質問形式にして書きやすくする

→ 一度作れば何度でも使える
→ 「プロらしい進め方」として
  クライアントからの信頼にもつながる

9. 実践チェックリスト

ヒアリング時に素材の有無・形式・提供可能な期限を確認したか

契約書・確認書に素材提供期限を明記したか

素材依頼書(一覧表)を作成してGoogleスプレッドシートで共有したか

写真の撮り方ガイド(良い例・悪い例)を用意したか

素材アップロード用のGoogleドライブ共有フォルダを作成したか

期限前のリマインドメッセージのテンプレートを用意したか

写真が揃わない場合のフリー素材の候補を事前に調べたか

ダミーテキスト・仮画像でサイトの雰囲気を先に作って見せたか

カメラマンの紹介ができるパートナーを1人でも確保しているか


まとめ

今回はクライアントから素材を受け取る進め方と素材が揃わないときの対処法を解説しました。ポイントをまとめると:

  • 素材が揃わない原因の多くは「何を用意すればいいかわからない」こと・制作者側の依頼の仕方を変えることで解決する
  • ヒアリング時に写真・テキスト・ロゴの有無と提供可能期限を必ず確認する
  • 素材依頼書(素材シート)をGoogleスプレッドシートで共有するとクライアントが動きやすくなる
  • テキストが書けないクライアントには「質問に答えてもらって制作者がまとめる」アプローチが効果的
  • 写真はGoogleドライブの共有フォルダに入れてもらう・LINEでの送信は画質劣化があるので避ける
  • 素材が揃わないときはダミーテキスト・フリー素材で仮組みして「ここまでできました」を先に見せる
  • 催促は「責める」のではなく「確認」するトーンで・期限の3〜5日前にリマインドする習慣を作る
  • カメラマンの紹介ができると差別化になりワンストップサービスとして単価アップにもつながる

次の記事では、アクセス地図の素材がない場合にGoogle mapをコードに埋め込む方法と、AIを利用してアクセス地図の画像を作成する方法をご紹介します。お楽しみに!

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