複数案件を並行して進めるコツ|素材待ちの時間を活かして納期を守る仕事術


はじめに

前回の記事ではアクセス地図素材がない場合のGoogle マップ埋め込みとAIを使った地図画像作成の方法を解説しました。素材がなかなか届かない状況はフリーランスWeb制作の現場で日常的に起こります。今回は「素材待ちの時間をムダにしない」という視点から、複数の案件を並行して進めるコツを解説します。1つの案件が止まっていても他の案件を進めることで、収入を安定させながら納期も守れる仕事の仕組みの作り方をお伝えします。


1. なぜ複数案件の並行進行が必要なのか

1.1 素材待ちが発生する頻度

フリーランスWeb制作での素材待ちの実態:

一般的な制作期間(コーポレートサイト):
→ 全体で4〜8週間

そのうち「素材待ち」が占める割合:
→ 全体の30〜50%(経験則)

つまり:
→ 8週間の案件のうち2〜4週間は
  素材待ちで手が止まっている
→ この時間が「収入のない時間」になりやすい

→ 複数の案件を持っていれば
  A案件が止まっている間にB案件を進められる
→ 稼働時間を無駄なく使える

1.2 並行進行のメリット

複数案件を並行して進めるメリット:

① 収入の安定
   → 素材待ちで収入がゼロになる期間を減らせる
   → 月収の変動が少なくなる

② 納期プレッシャーの分散
   → 1案件に集中しすぎて行き詰まったとき
     別の案件に切り替えることで
     気分転換になる

③ スキルアップの加速
   → 複数のジャンル・技術を同時に触れることで
     学習スピードが上がる

④ クライアントへの信頼
   → 「素材待ちの間も別の案件で成長している」
     状態が続くことで実力が伸びる

⑤ リスクの分散
   → 1案件がキャンセルになっても
     他の案件があれば致命的にならない

2. 並行進行に向いている案件の選び方

2.1 「ゆったりした納期」の案件を意識的に取りに行く

並行進行に向いている案件の特徴:

✅ 納期まで4週間以上ある
   → 急ぎの案件は他の作業との切り替えが難しい

✅ クライアントの連絡頻度が高すぎない
   → 毎日確認が必要な案件は
     他の案件に集中しにくい

✅ 制作フローが明確
   → ヒアリング→デザイン確認→コーディング→納品
     という流れが決まっていて
     どこで一時停止できるかわかる

✅ 素材提供のペースが読める
   → 「毎週少しずつ送ります」という
     クライアントより「一括でまとめて送ります」
     という方が止まりやすい

❌ 並行進行に向かない案件:
→ 「今週中に仕上げてください」という急ぎ案件
→ クライアントからの修正依頼が多い案件
→ 仕様が頻繁に変わる案件
→ 機密性が高くて集中が必要な案件

2.2 同時に持つ案件数の目安

経験値別の適切な案件数:

初心者(フリーランス歴0〜3ヶ月):
→ 最大2件まで
→ まず1件をきちんと仕上げる経験を積む
→ 2件目は1件目の制作フローに
  慣れてから始める

中級者(フリーランス歴3〜12ヶ月):
→ 2〜3件程度
→ それぞれの案件のステータスを
  把握できる状態を維持する

上級者(フリーランス歴1年以上):
→ 3〜5件程度
→ ディレクション・外注を使い始める段階

→ 多ければ多いほどよいわけではない
→ 「管理できる量」を超えると品質が落ちる

3. 案件管理の基本:見える化する

3.1 案件管理ボードを作る

複数の案件を並行して進めるときに最も重要なのが「今どの案件がどの状態にあるか」を常に把握できる仕組みを作ることです。

案件管理ボードに記録する情報:

各案件について以下を管理する:

① 案件名・クライアント名
② 契約金額・入金状況
③ 現在のステータス
   → ヒアリング中 / デザイン確認待ち /
     素材待ち / コーディング中 /
     修正対応中 / 検収待ち / 完了
④ 次のアクション(自分がやること)
⑤ 次のアクション(クライアントがやること)
⑥ 納期(デザイン確認・コーディング完了・公開)
⑦ 最終連絡日

3.2 Notionで案件管理ボードを作る例

Notionでのデータベース構成:

テーブルのプロパティ(列):
・案件名(テキスト)
・クライアント(テキスト)
・ステータス(セレクト)
  → 🟡進行中 / 🔵素材待ち / 🟢完了 / ⚫中断
・金額(数値)
・納期(日付)
・最終連絡(日付)
・次のアクション(テキスト)
・担当者(自分 / クライアント)

ビューを2つ作る:
① テーブルビュー → 全案件の一覧を確認する
② ボードビュー(カンバン) → ステータスで分類して
  「今日やること」が一目でわかる
カンバンボードのイメージ:

┌──────────┬──────────┬──────────┬──────────┐
│  素材待ち │ コーディング│ 修正対応  │ 検収待ち │
├──────────┼──────────┼──────────┼──────────┤
│ A社LP    │ B美容院  │ C飲食店  │ D整骨院  │
│ (素材    │ (TOP完成)│ (修正2回)│ (納品済) │
│  3/15待) │          │          │          │
├──────────┼──────────┼──────────┼──────────┤
│ E工務店  │          │          │          │
│ (写真待) │          │          │          │
└──────────┴──────────┴──────────┴──────────┘

→ 「素材待ち」の案件が2件あるとき
  「コーディング中」の案件を優先して進める

3.3 Googleスプレッドシートでシンプルに管理する

Notionが難しい場合はスプレッドシートでも十分:

| 案件名 | 状態   | 次のアクション | 期限   | 最終連絡 | 備考 |
|--------|--------|----------------|--------|----------|------|
| A社LP  | 素材待 | 素材確認メール | 3/20   | 3/10     |      |
| B美容院| 制作中 | TOPコーディング| 3/25   | 3/15     |      |
| C飲食店| 修正中 | フォーム修正   | 3/18   | 3/14     | 2回目|

→ 毎朝1分でこのシートを確認することを習慣にする
→ 「今日何をすべきか」が一目でわかる

4. 素材待ち時間を活用する具体的な作業リスト

4.1 素材が届くまでにできること

「素材待ち」の時間は決してムダではありません。先に進められることがたくさんあります。

素材待ち中に進められる作業:

【同じ案件内でできること】

① ワイヤーフレーム・デザインの先行作業
   → 写真がなくてもレイアウトは決められる
   → フリー素材でデザインの雰囲気を作っておく
   → テキストはダミーで入れておく

② HTMLの構造を先に書く
   → セクション・見出し・リストの骨格は
     素材がなくても書ける
   → 後から素材を差し込むだけの状態にしておく

③ CSSのベース設定を書く
   → リセットCSS・変数定義・共通スタイルは
     素材に関係なく書ける

④ JavaScriptの機能実装
   → ハンバーガーメニュー・スムーススクロール
   → アニメーション・フォームのバリデーション

⑤ WordPressのテーマ設定
   → テーマのインストール・プラグイン設定
   → カテゴリ・メニューの設定

【次の案件の準備】
→ 見積もりの作成
→ 提案文の準備
→ ポートフォリオの更新
→ 新規案件の提案活動

【スキルアップ】
→ 新しい技術の学習
→ このブログの記事執筆
→ コミュニティへの参加・情報収集

4.2 「先行着手できる部分」をヒアリング時に見極める

ヒアリング時に確認しておくこと:

「素材なしでも進められる部分」を特定する:

✅ 確認済みで始められるもの:
→ サイトの全体構成(ページ数・ページ名)
→ カラーパレット(ブランドカラーが決まっているなら)
→ フォント(日本語フォントの選定)
→ ヘッダー・フッターのデザイン
→ お問い合わせフォームの項目

❌ 素材がないと進められないもの:
→ ヒーローセクション(メイン写真が必要)
→ スタッフ紹介(写真・プロフィールが必要)
→ サービス詳細(説明文・写真が必要)

→ 「先に進める部分」と
  「素材待ちで止まる部分」を
  最初から分けておくと効率がよい

5. 時間管理のコツ

5.1 1日の時間を「案件ブロック」で分ける

時間管理の考え方(例:1日8時間作業の場合):

❌ NG:A案件を思い出すたびに切り替える
   → 集中が途切れてどちらも中途半端になる

✅ OK:案件ごとにブロックを決める

午前(4時間):B案件のコーディング集中
  → 通知をオフ・メールは見ない

午後前半(2時間):A案件のデザイン作業
  → B案件のことは考えない

午後後半(1時間):C案件のメール対応・確認

夕方(1時間):タスク整理・翌日の計画

→ 「切り替え」の時間も必要なので
  1日2〜3案件が実際の上限

5.2 タスクの粒度を小さくする

タスク管理のコツ:

❌ 大きすぎるタスク:
「A社のコーディング」
→ 何から始めればいいかわからない
→ 終わりが見えないので着手しにくい

✅ 小さく分解したタスク:
「A社のヘッダーHTMLを書く」(30分)
「A社のヘッダーCSSを書く」(30分)
「A社のヒーローセクションを組む」(1時間)
「A社のナビゲーションにJSを付ける」(30分)

→ 1つのタスクが30分〜1.5時間で終わる粒度が最適
→ 「今日やること」を朝に5〜8個ピックアップする
→ 終わったタスクに✅をつけることで達成感が生まれる

5.3 ポモドーロテクニックで集中力を保つ

ポモドーロテクニック:

① 25分間集中して作業する
② 5分間休憩する
③ ①〜②を4回繰り返す(2時間)
④ 30分間の長い休憩を取る

→ タイマーをセットして
  「25分だけ集中する」と決めると
  取り組みやすい

→ 複数案件の場合はポモドーロ単位で
  案件を切り替えると
  集中力が持続しやすい

ツール:
→ スマートフォンのタイマー
→ Forest(集中アプリ)
→ ブラウザ拡張機能「Pomodoro Timer」

6. クライアントとの進捗共有を仕組み化する

6.1 「進捗報告テンプレート」を使う

複数案件を抱えると、それぞれのクライアントへの連絡が煩雑になります。テンプレートを使って効率化しましょう。

週次進捗報告のテンプレート:

件名:【進捗報告】〇〇サイト制作 - 第〇週

〇〇様

お世話になっております。
今週の制作進捗をご報告いたします。

【今週完了した作業】
・TOPページのコーディング
・お問い合わせフォームの実装

【来週予定している作業】
・下層ページのコーディング
・スマートフォン対応

【クライアント様にお願いしたいこと】
・スタッフ写真の提供(期限:〇月〇日)
・会社概要テキストの確認

現時点での納期(〇月〇日)に向けて
順調に進んでおります。

ご不明な点があればお気軽にご連絡ください。
よろしくお願いいたします。

💡 週次報告は送ることが目的ではなく「素材催促の自然な口実」になります: 「進捗報告のついでに素材のリマインドをする」という形にすると、催促感が薄れてクライアントが動きやすくなります。

6.2 連絡のタイミングを曜日で固定する

連絡の曜日を固定するメリット:

月曜日:各案件の週次報告・今週のタスク確認
水曜日:中間確認・疑問点の解消
金曜日:今週の完了報告・来週の確認事項

→ 「月曜日に報告が来る」と
  クライアントが認識することで
  不安を感じにくくなる

→ 自分も「月曜日に報告する」と決めることで
  報告を忘れにくくなる

→ 複数案件でも「月曜日はすべての案件の
  報告をまとめて書く時間」と決めると
  効率的

7. 並行進行でよくあるミスと対策

7.1 案件を混同する

よくあるミス:
→ A社のファイルをB社に送ってしまう
→ A社のカラーコードをB社に使ってしまう
→ メールの宛先を間違える

対策:

① フォルダ名・ファイル名に必ずクライアント名を付ける
   × 「LP_final.html」
   ✅ 「A社_LP_final.html」

② クライアントごとにフォルダを分ける
   clients/
   ├── A社_コーポレート/
   ├── B美容院_LP/
   └── C飲食店_WordPress/

③ メールの下書きは送信前に宛先を必ず確認する
   → 「一通送ったら5秒止まって宛先を見る」習慣

④ 作業前に「今日はどのクライアントの作業か」を
   付箋や画面端にメモしておく

7.2 どの案件を優先すべきかわからなくなる

優先順位の判断基準(この順番で考える):

① 納期が近い案件
   → 明日・明後日が期限のものを最優先

② クライアントからの回答を待っている案件
   → 早く返すほど相手の時間を大切にできる

③ 素材がそろって「今すぐ進められる」案件
   → 待ち状態の案件は後回しでOK

④ 単価の高い案件
   → 同じ状況なら高単価を優先する

⑤ 自分が得意な技術を使う案件
   → 苦手な案件を後回しにしすぎないように注意

毎朝の習慣:
→ 案件管理ボードを開く
→ 「今日進められる案件」を1〜2件特定する
→ その案件のタスクを3〜5個書き出す
→ 作業開始

7.3 疲れて品質が落ちる

品質を保つための仕組み:

① 1日の作業時間に上限を設ける
   → 「6時間を超えたら止める」など
   → 疲れた状態での作業はバグのもと

② 重要な作業は午前中に集中させる
   → 午前:集中力が必要なコーディング・デザイン
   → 午後:メール返信・タスク整理・軽い修正

③ チェックリストで品質を担保する
   → 納品前の確認項目をリスト化しておく
   → 疲れていてもリストがあれば見落とさない

④ 週1日は完全休業日を作る
   → 連続稼働は思考力・判断力を低下させる
   → 休んだ翌日の方が作業効率が高いことが多い

8. 並行進行を支えるツール

並行進行に役立つツール:

タスク・案件管理:
→ Notion(データベース機能・カンバンビュー)
→ Trello(シンプルなカンバン)
→ Googleスプレッドシート(シンプルで十分)

時間管理:
→ Toggl Track(作業時間の記録・案件別に計測できる)
→ 各スマホのタイマー(ポモドーロ用)

ファイル管理:
→ Googleドライブ(クライアントごとにフォルダ)
→ GitHub(コードのバージョン管理)

コミュニケーション:
→ Chatwork・Slack(クライアントとのやり取り)
→ Googleカレンダー(納期・打ち合わせの管理)

集中管理:
→ Forest(スマホを触らないようにするアプリ)
→ ブラウザの通知をオフにする

9. 実践チェックリスト

現在進行中のすべての案件をNotionまたはスプレッドシートで一覧管理しているか

各案件の「現在のステータス」と「次にやること」が明確か

素材待ちの案件で先行着手できる部分(HTML骨格・CSSベース)を進めているか

1日の作業を「案件ブロック」に分けて集中して取り組んでいるか

タスクを30分〜1.5時間の粒度に分解しているか

週次の進捗報告を曜日固定でクライアントに送る習慣があるか

ファイル名・フォルダ名にクライアント名を必ず含めているか

1日の作業時間に上限を設けて疲れた状態での作業を避けているか

週1日は完全休業日を設けているか


まとめ

今回は複数案件を並行して進めるコツと素材待ちの時間を有効活用する方法を解説しました。ポイントをまとめると:

  • 素材待ちで手が止まる時間は全体の30〜50%になることもある・複数案件を持つことでその時間を有効活用できる
  • 初心者は最大2件・慣れてきたら2〜3件が適切な案件数の目安
  • Notionやスプレッドシートで「案件名・ステータス・次のアクション・納期」を一覧管理して毎朝確認する習慣を作る
  • 素材待ち中でもHTML骨格・CSSベース・JavaScript実装など先行できる作業は多い
  • 1日の作業を「案件ブロック」に分けてタスクを30分〜1.5時間の粒度に細かく分解することで集中力が続く
  • 週次報告を月曜日などの固定曜日に送る仕組みを作ると素材催促も自然にできる
  • ファイル名・フォルダ名にクライアント名を入れて案件の混同を防ぐ
  • 1日の作業時間に上限を設けて週1日は完全休業日を作ることで品質を維持する

次の記事では、レスポンシブ崩れの修正に行き詰った時にAIにコードファイルをアップロードして修正方法を教えてもらう方法をご紹介します。お楽しみに!

コメント

タイトルとURLをコピーしました