はじめに
前回の記事ではFigmaを使ってポートフォリオのデザインを作る実践手順を解説しました。ポートフォリオが完成してくると「いよいよ実際に案件を受けてみたい」という気持ちが高まってきます。今回はフリーランスとしてWeb制作の仕事を始めるための準備・心構え・営業の基本を解説します。「まだ実力が足りない」と思っている方も多いですが、案件を獲得しながら成長していくというサイクルが実力を最も速く伸ばします。
1. フリーランスを始めるタイミング
1.1 「準備ができてから」は永遠に来ない
よくある思考パターン:
「もう少しReactが書けるようになったら案件を探す」
↓
「TypeScriptも覚えてから始めよう」
↓
「ポートフォリオをもっと充実させてから」
↓
(永遠に始められない)
→ 完璧な準備ができてから始めようとすると
永遠に始められない
→ 「今できる仕事」から受け始めることが大切
1.2 最初の案件を受けられる最低ラインの目安
最初の案件を受け始められる目安:
技術面:
✅ HTML・CSSでWebページが作れる
✅ WordPressでブログサイトが構築できる
✅ レスポンシブ対応(スマートフォン表示)ができる
✅ お問い合わせフォームが実装できる
→ ReactやTypeScriptは後から覚えてもOK
→ まずHTMLとCSSとWordPressだけでも
十分仕事は受けられる
ビジネス面:
✅ 連絡のレスポンスが早い(1営業日以内)
✅ 納期を守る
✅ わからないことを「わからない」と正直に言える
✅ 簡単な見積もりと請求書が作れる
💡 「技術力」より「信頼性」が最初の案件獲得に重要です: 初心者でも丁寧な対応・約束を守る・誠実なコミュニケーションができれば仕事は取れます。信頼の積み重ねが仕事を呼んでくれます。
2. 独立前の準備
2.1 ポートフォリオを整える
案件を獲得するうえで最も重要な準備がポートフォリオです。
ポートフォリオに載せるもの:
① 実際に制作したサイト(2〜5件)
→ 実績がない場合は自分で作った練習サイトでもOK
→ 架空の会社・お店のサイトを作ることも有効
② 各制作物の情報:
→ サイトのURL(公開されているもの)
→ 制作の目的・課題・解決策
→ 使用した技術(HTML・CSS・WordPress など)
→ 工夫した点・こだわった点
③ 自己紹介・スキル一覧
④ お問い合わせ先(メールアドレスまたはフォーム)
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ポートフォリオサイトがない場合:
→ この連載で学んだ知識を使って
まずポートフォリオサイト自体を作る
→ 「自分のサイトを作った」こと自体が
最初の実績になる
2.2 サービスメニューと料金を決める
サービスメニューの例:
ランディングページ制作:
→ 3〜8万円(シンプルなものから)
コーポレートサイト制作(WordPress):
→ 10〜30万円
ブログサイト構築:
→ 5〜15万円
既存サイトの修正・改修:
→ 時間単価制(3,000〜5,000円/時間)
---
初心者が陥りやすい「安すぎる価格設定」:
❌ 「実績がないから無料でいいです」
❌ 「1万円でもいいです」
→ 安すぎる価格は「品質への不安」を逆に
与えることがある
→ 適正価格で受けることで責任感も生まれる
最初のうちの目安:
→ ランディングページなら3〜5万円から
→ 「勉強代」として安くするにしても
2万円以上はもらう
2.3 必要なビジネスツールを準備する
最低限必要なもの:
① 請求書・見積もり書のテンプレート
→ MisocaやFreeeの無料テンプレートが便利
→ 記載項目:発行日・件名・金額・支払期限・振込先
② 専用のメールアドレス
→ Gmailで「名前@gmail.com」でもOK
→ 将来的には独自ドメインのメールが望ましい
③ 銀行口座
→ 仕事用の口座を分けておくと確定申告が楽になる
④ 契約書または業務委託契約書のテンプレート
→ ランサーズ・クラウドワークスには
プラットフォーム内で契約管理できる仕組みがある
→ 直接取引の場合はテンプレートを使う
確定申告について:
→ 副業で年間20万円以上の収入があれば
確定申告が必要
→ フリーナンス・青色申告など
税務処理は税理士に相談するのが確実
3. 案件を探す場所
3.1 クラウドソーシング(最初の案件に向いている)
主なクラウドソーシングサービス:
① クラウドワークス(crowdworks.jp)
→ 国内最大級・案件数が豊富
→ 初心者でも始めやすい
→ プラットフォーム手数料:20〜5%
② ランサーズ(lancers.jp)
→ クラウドワークスと並ぶ大手
→ デザイン・コーディング案件が多い
→ プラットフォーム手数料:20%
③ ココナラ(coconala.com)
→ スキルを「商品」として出品する形式
→ 「WordPressサイトを作ります」と出品する
→ 待ちの営業なので最初は受注まで時間がかかる
クラウドソーシングのコツ:
・最初は提案数を多めに(1日3〜5件)出す
・提案文はコピペせず毎回案件に合わせて書く
・プロフィールを丁寧に埋める
・最初の数件はレビュー獲得のため少し低価格も仕方ない
3.2 SNSを使った直接営業
X(旧Twitter)での案件獲得:
① プロフィールを整える
→ 「#Web制作」「HTMLコーダー」など
わかりやすい肩書きを入れる
→ ポートフォリオサイトのURLを載せる
② 発信を続ける
→ 学んだこと・作ったものを毎日投稿する
→ 「WordPressサイトを作りました」と
完成品を見せる投稿が効果的
③ 見込み客と繋がる
→ 中小企業の経営者・個人事業主をフォローする
→ 「ホームページを作りたい」という投稿に
丁寧にリプライする
④ ハッシュタグを活用する
→ #web制作
→ #WordPressサイト制作
→ #ポートフォリオ
3.3 知人・知り合いへの営業(最も成約率が高い)
身近なところへの営業:
「こんな人」に声をかけてみる:
→ 飲食店・美容院・整骨院・個人事業主の知人
→ 「まだホームページがない」または
「ホームページが古い」お店・会社
声のかけ方:
「最近Web制作を学んでいて、
ホームページ制作をお手伝いできます。
もしご興味があれば一度お話しさせてください。」
→ 断られても問題なし
→ 紹介してもらえることもある
紹介を活用する:
→ 1件でも仕事をすると
「知り合いに紹介してもいいですか?」と
聞いてもらえることがある
→ 口コミ・紹介案件はクオリティが高い傾向がある
3.4 勉強会・コミュニティへの参加
リアルでの繋がりを作る:
① connpassなどで地域の勉強会を探す
→ 「Web制作 勉強会」「フロントエンド meetup」など
→ 参加者の中にクライアントになり得る人がいる
② オンラインコミュニティ
→ Discordの技術系コミュニティ
→ もくもく会(一緒に作業する会)
→ SlackのWeb制作者コミュニティ
→ 案件の直接獲得より
「顔が見える関係を作ること」が目的
→ 信頼関係ができてから仕事に繋がることが多い
4. 提案文の書き方
4.1 選ばれる提案文の条件
クラウドソーシングでは多くの人が同じ案件に提案します。選ばれる提案文には共通点があります。
選ばれる提案文の共通点:
① 案件を読んでいることが伝わる
→ 「御社の〇〇という課題を解決したいと考えています」
→ 「ご依頼内容の△△という点については
〇〇の方法で対応できます」
② 自分の経験・実績を具体的に伝える
→ 「WordPressで3サイトの制作経験があります」
→ 実績のURLを貼る(ポートフォリオへのリンク)
③ 相手の不安を取り除く
→ 「修正回数は3回まで対応いたします」
→ 「制作の進捗は毎日共有します」
→ 「わからないことは正直に伝えます」
④ 具体的なスケジュール感を示す
→ 「ヒアリング→デザイン確認→コーディング→公開
という流れで2〜3週間で完成予定です」
⑤ 読みやすい文章
→ 適切な改行・箇条書きを使う
→ 200〜400文字程度に抑える
→ 丁寧だが堅すぎない文体
4.2 提案文の例
提案文のテンプレート(コピペせずに参考に):
はじめまして。Web制作フリーランスの〇〇と申します。
今回のご依頼を拝見して、△△(案件の特徴・課題)という
点で貢献できると感じ、ご提案させていただきます。
【私の経験・実績】
・WordPressを使ったコーポレートサイトの制作経験:3件
・制作実績はこちらからご確認いただけます:(URL)
・〇〇(案件に関連する技術・経験)
【進め方のご提案】
1. ヒアリング(1〜2日)
ご要望・目的・デザインイメージを確認します。
2. デザイン確認(3〜5日)
Figmaでデザイン案をお送りします。
3. コーディング・実装(1〜2週間)
修正は3回まで対応いたします。
4. 公開・納品
ご不明な点があれば何でもお気軽にご質問ください。
よろしくお願いいたします。
5. ヒアリングと要件定義
5.1 ヒアリングで確認すること
クライアントとの最初の打ち合わせで確認すること:
目的・ゴール:
□ このサイトを作る目的は何か
□ 完成したら何が達成できたと考えるか
□ ターゲットとなる利用者はどんな人か
デザイン:
□ 好きなサイト・参考にしたいサイトはあるか
□ 使いたい色・フォントのイメージはあるか
□ ロゴ・写真・テキストは用意してもらえるか
□ 既存のブランドガイドラインはあるか
技術・機能:
□ 必要なページ数とページの種類
□ お問い合わせフォームの有無
□ ブログ・更新機能の有無
□ ECサイト・予約システムの有無
□ 公開後に自分で更新したいか(WordPressが必要か)
スケジュール・予算:
□ 公開希望日はいつか(逆算してスケジュールを組む)
□ 予算はどのくらいか
□ 修正の回数・範囲の認識合わせ
納品後:
□ ドメイン・サーバーの管理は誰がするか
□ 保守・更新の依頼はあるか
□ SSL証明書・セキュリティ対応の希望
5.2 認識のズレを防ぐ「確認書」を作る
ヒアリング後に「制作確認書」を送る:
内容:
・制作するページの一覧
・主な機能・仕様
・納期・スケジュール
・費用の内訳
・修正回数の上限
・追加費用が発生する条件
・素材(テキスト・写真)の提供期限
→ 口頭だけで進めると後でトラブルになりやすい
→ 文章で確認してもらうことが双方を守る
6. 制作中のコミュニケーション
6.1 進捗の共有を欠かさない
制作中にやること:
① 定期的な進捗報告
→ 「現在こういう状況です」を最低でも週1回報告する
→ 「問題なく進んでいます」だけでも安心感につながる
② 確認が必要なときは必ず確認する
→ 「〇〇の部分が不明だったので△△で進めましたが
よろしいでしょうか?」
→ 勝手に判断せず確認を取る
③ トラブルは早めに報告する
→ 「実は納期が厳しくなってきました」を
ギリギリに言わない
→ 早めに伝えて解決策を一緒に考える
④ レスポンスは速く
→ 連絡が来たら24時間以内(できれば当日)に返す
→ 「確認して折り返します」だけでもOK
6.2 修正対応のルール
修正のよくあるトラブルを防ぐには:
❌ よくあるトラブル:
「なんか違う感じ」という曖昧な修正依頼が
何度も来て終わらない
✅ 対策:
・契約時に「修正回数は3回まで」と決める
・修正依頼は文章でもらう(口頭だと記録が残らない)
・「追加の修正はオプション費用が発生します」
とあらかじめ説明しておく
・「どこをどう変えてほしいか」を具体的に書いてもらう
7. 請求と支払い
7.1 請求書の送り方
請求の流れ:
① 納品後に請求書を発行する
② 請求書に記載する内容:
→ 請求書番号
→ 発行日・支払期限(納品日から30日以内が一般的)
→ 件名(例:ポートフォリオサイト制作費)
→ 金額(税込表示)
→ 振込先口座情報
→ 振込手数料の負担についての記載
③ メールに添付して送る
→ 「〇〇の件、納品完了しましたので
請求書をお送りします」
④ 支払期限を過ぎたら催促する
→ 1週間過ぎたら丁寧に確認のメールを送る
7.2 先払い・分割払いの検討
支払いリスクを減らすには:
着手金制度:
→ 受注時に半額を先払いしてもらう
→ 「着手金50%・残金50%(納品時)」
→ 最初から伝えておくことが大切
分割払い:
→ 金額が大きい場合は3分割なども検討する
→ 「着手金30%・中間30%・納品時40%」など
クラウドソーシング利用のメリット:
→ プラットフォームがエスクロー(第三者預かり)で
支払いを保証してくれる
→ 最初のうちはクラウドソーシング経由が安全
8. 独立後の成長サイクル
8.1 実績を積み上げるサイクルを作る
フリーランスの成長サイクル:
① 最初の案件を受ける
→ クラウドソーシング・知人経由・SNS
② 丁寧にこなしてレビュー・評価をもらう
→ 良い評価が次の案件を呼ぶ
③ ポートフォリオに実績を追加する
→ 「こんな仕事をしました」が見える形で残る
④ 実績をもとに単価を上げていく
→ 3ヶ月〜半年で1.5倍を目指す
⑤ 専門性を高めて得意分野を作る
→ 「飲食店のホームページが得意」
→ 「Reactでのフロントエンド開発が得意」
→ ニッチな専門性が高単価につながる
⑥ 紹介・リピートで安定してくる
→ 最終的には営業しなくても仕事が来る状態へ
8.2 月収の目標を段階的に設定する
副業から本業へのステップ:
最初の3ヶ月:
→ 月1〜2万円(1件受注できれば十分)
→ 「実際に仕事を受けた」という経験が最大の財産
3〜6ヶ月:
→ 月3〜5万円
→ 2〜3件受注できるようになる
6ヶ月〜1年:
→ 月10〜15万円
→ 副業として安定してくる
1年以降:
→ 月20万円〜(本業と同等以上を目指す)
→ 独立を視野に入れる
→ 急ぎすぎず「小さく始めて少しずつ伸ばす」
というスタンスが長続きする
9. メンタル面の心構え
9.1 最初はうまくいかなくて当たり前
フリーランスを始めて誰もが経験すること:
・提案しても全然返事がこない
・受けた案件が思ったより難しかった
・クライアントとの認識がズレてしまった
・思ったより時間がかかって単価が低くなった
→ これは全員が通る道
→ 1件ずつの経験が「気をつけること」を教えてくれる
→ 失敗した経験は後輩への価値あるアドバイスになる
9.2 「完璧にできてから」は間違い
大切な考え方:
「完璧な実力になってから独立する」は幻想
現実は:
→ 案件を受けながら学ぶことで
独学より10倍速く成長できる
→ 「締め切りがある」「お金をもらっている」という
プレッシャーが集中力を高める
→ クライアントから「これはどうなってる?」と
聞かれることで新しいことを調べるきっかけになる
→ 「今できることで始めて、
足りない部分は受けながら学ぶ」
これがフリーランス成長の本質
まとめ
今回はフリーランスWeb制作で独立するための準備と営業の基本を解説しました。ポイントをまとめると:
- HTML・CSS・WordPressができれば最初の案件は受けられる・技術よりも信頼性が最初の案件獲得に重要
- ポートフォリオは架空サイトでもよいので2〜5件の実績を掲載してURL・使用技術・こだわりを載せる
- 最初の案件はクラウドソーシング・SNS・知人営業の3つから同時並行で探す
- 提案文は「案件を読んでいる」ことが伝わるよう毎回カスタマイズして具体的なスケジュールを示す
- ヒアリングで目的・デザイン・機能・スケジュール・予算の5つを確認してから確認書を送る
- 制作中は定期的な進捗報告・トラブルの早期報告・速いレスポンスで信頼を積み上げる
- 修正回数の上限を事前に決めてトラブルを防ぐ
- 「小さく始めて少しずつ単価を上げていく」という段階的な成長サイクルを意識する
- 案件を受けながら学ぶほうが独学より速く成長できる・完璧な準備を待つ必要はない
次の記事では、フリーランスとして継続的に収入を安定させるための長期的な戦略と、専門性を高めて高単価案件を狙うアプローチを解説します。お楽しみに!
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